吉田医院院長 刑部利雄

『エンテロウイルス』ちょっと聞き慣れない名前ですが
このウイルスは、ヒトの腸管で増殖するウイルスでその名前の由来はEntero・【腸を意味する接頭語】によるものです。主に夏場に流行する「 夏カゼ 」の大きな原因となる病原体です。
このウイルスによっておこる病気は無菌性髄膜炎・出血性結膜炎・ヘルパンギーナ流行性胸痛症・手足口病・さまざまな発疹症や熱性疾患などがあります。
このなかで小児によくみられる「ヘルパンギーナ」と厚生省感染症発生動向調査で1990年、1995年に大流行したときと同様の流行の兆しがみられている「手足口病」について説明します。

ヘルパンギーナ

エンテロウイルスの中のコクサッキーウイルスA1~A10,16,22・コクサッキーウイルスB1~5・エコーウイルス16,25によっておこる夏カゼで、潜伏期は2~5日。
発症は急で39℃前後の高熱が1~4日続き喉(口蓋弓・軽口蓋・口蓋垂)の粘膜に小水疱を認め、その後浅い潰瘍をつくり、4~6日でなおる病気です。5歳以下の乳幼児に好発し前述の高熱のほかに強い咽頭痛・流涎などの症状がみられます。
治療は対症的におこないますが、咽頭痛のため食事摂取が困難になることがありますのでとくに小児では水分の不足による脱水にならないように注意することが必要でしょう。


手足口病

エンテロウイルスの中のコクサッキーウイルスA10,16、エンテロウイルス71によっておこる病気です。潜伏期は3~7日で、病名が示すように手足に紅色ないし赤褐色の丘疹および水疱の形成を認め、口腔粘膜に口内炎を認めます。そのほかに膝やお尻にも発疹をみる
ことがあります。
この病気も、7月をピークとした夏場に多く小児期に好発します。約30%程度の症例で38℃前後の発熱を認めることがあり、口内痛のために食事が摂りにくくなることもあります。
治療は対症的におこないます。また稀に脳炎や脳症などの合併症をおこすことも知られています。
よく問題になるのは、登校・登園の停止ですが感染から咽頭では1~2週間,便では3~5週間の間ウイルスが検出されますので症状の程度により、主治医に判断してもらうことになります。

どちらの病気も鼻咽頭分泌物と糞便からの飛沫感染・経口感染が経路となるため「うがい」・「手洗い」が有効な予防法 といえるでしょう。
またこのウイルスは乾燥には比較的弱い性質をもっているため洗濯物は日に当てて乾かす・布団を干すなども効果が期待できると思います。

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